初々164

雨の日の午後、悲しみに暮れながら、傘もささずに歩く。街中で浮いている存在。周りのヒトは奇異の目で私を見ている。いや、見ないように、目を合わさないようにしている。関わりを持たなくては生きていけない人間は、関わりを持つことに怯えている。誰も心配してくれない、同情はするが助けてはくれない。行動できないのならば、言葉だけ、気持ちだけの優しさなんていらない。秋雨よりも冷たい、幾多の人間が行き交う街で、私は一人ぼっちだ・・・。

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雨の日の午後、悲しみに暮れながら、傘もささずに歩く。街中で浮いている存在。周りのヒトは奇異の目で私を見ている。いや、見ないように、目を合わさないようにしている。関わりを持たなくては生きていけない人間は、関わりを持つことに怯えている。誰も心配してくれない、同情はするが助けてはくれない。行動できないのならば、言葉だけ、気持ちだけの優しさなんていらない。秋雨よりも冷たい、幾多の人間が行き交う街で、私は一人ぼっちだ・・・。今日私は、男にフラれた。3年以上付き合った長い関係だった。別れの言葉は簡単で「他に好きな人ができた」だった。中途半端な優しさで誤魔化されるよりも、素直な気持ちをぶつけてくれたことで、私はスッキリした気持ちで別れることができた。しかし、ストレート過ぎる別れ言葉は、未練の言葉を言わせることさえ許さなかった。それでも何も言えなかった。彼のそんなトコロが好きだったから。私はいつまで未練たらしく悩んでいるのだろう。こうやって濡れながら街を歩くのも「誰かに心配されたい」という気持ちから行動しているのだ。と、私の頭は理解していたが何故だか止めることはできなかった。やはり私は傷ついているし、悩んでいるし、寂しいのだろう。誰でもいい、誰か私に声をかけて。声をかけられたのなら、私のことを好きにしていい。そんな感傷に浸っていた。自分は強い人間だと自負していたのだが、やはり長年付き合った人間との別れは、心に深い傷を負わせるのだ。「私も歳相応の女の子なんだな。」なんて、かわいいことを思ってしまった自分に、少し笑えてきた。「ちょっといいですか?」自嘲気味な私の目の前で、誰かが声を掛けてきた。見るからに怪しい、言ってることも怪し過ぎる。通常の思考ならば確実に付いていかない程、稚拙なキャッチだったのだが、今の私にはこのカリソメの優しさでさえ、温かかった。人の温かみが欲しかった。男に付いていく途中、「今日はこの人に何をされてもいいかな。」なんて思ってしまった。そんな私の平日のひとコマ。